2026.11.03 [イベントレポート]
「黒澤明賞」授賞式 呉美保監督「背筋をずっと伸ばさないと」、モハマド・ラスロフ監督「いまはお礼だけを…」
黒澤明賞

第39回東京国際映画祭の「黒澤明賞」授賞式が11月3日、東京・帝国ホテルで行われ、今年の受賞者である呉美保監督とモハマド・ラスロフ監督が出席した。

2006年に『酒井家のしあわせ』で長編映画監督デビューした呉監督は、一貫して社会の片隅に生きる人々を、多面的に見つめる作品を生み出し、近年は『きみはいい子』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『ふつうの子ども』など、子どもたちをありのままに描く演出が高く評価されている。

壇上に立った呉監督は、「雲の上の存在であり、偉大なる大巨匠である黒澤明監督の名前がついた賞をいただき、本当に身に余る光栄です。背筋をずっと伸ばさないと」と神妙な面持ち。「私は“点”のような存在だと思うんですけど、見つけてくださったことが救いのよう」だと、山田洋次監督をはじめとする選考委員に感謝を伝えた。

挨拶では、大阪芸術大学卒業後に師事した大林宣彦監督、そして、この8月に急逝した作曲家の田中拓人さんへの思いも語り、「これからも映画作りを続けなさい。続けていいよと言われたような気持ちになった。今回の受賞を大きななお守りにして、映画作りに励んでいきます」と誓った。また、映画製作を支える家族への感謝も述べていた。

イラン出身のラスロフ監督は、イラン政府による過酷な検閲や禁固判決、製作禁止処分に直面しながらも決して屈することなく、ゲリラ的撮影も駆使しながら独自の映画制作を追求。『悪は存在せず』で第70回ベルリン国際映画祭金熊賞を、『聖なるイチジクの種』では第77回カンヌ国際映画祭審査委員特別賞を受賞した。

様々な圧力に屈せずに創作活動を続け、世界中のクリエイターに勇気を与えてきたことも含め、黒澤明賞を授与されたラスロフ監督は、幼少期を振り返り「当時、イランのテレビ局では黒澤明監督の作品が放送されていて、私もその特別な世界を知った」と巨匠への思いを語った。

そして、「賞をいただくのは大変光栄ですが、この喜びと幸せを、イランで生きる人々の抑圧や困難と、どのようにバランスをとって受け入れるべきか」と葛藤を吐露。「いまはお礼だけをお伝えします」と挨拶すると、会場は大きな拍手に包まれた。

黒澤明賞は、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞。今年の選考委員は山田洋次監督をはじめ、昨年の同賞受賞者でもある『国宝』の李相日監督、撮影監督の芦澤明子氏、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三氏が務めた。

第39回東京国際映画祭は11月4日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
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