2026.10.30 [イベントレポート]
第二次世界大戦末期のパルチザンを描く『地獄が来たとしても』を映画祭で上映する意義を監督と主演俳優が熱弁

第39回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されているイタリア映画『地獄が来たとしても』が10月28日、公式上映された。上映後、本作の監督・脚本・プロデューサーを務めたサムエレ・ロッシと主演のルカ・タンガネッリによるQ&Aが行われ、2人が本作に込めた情熱と映画祭で上映する意義を語った。

第二次世界大戦末期の1944年、ドイツ軍とファシスト勢力の支配下にある北イタリアのアルプス地方を舞台に、過酷な雪山で孤独な戦いを強いられた若いパルチザン兵士の姿を活写した本作。本上映がアジアンプレミアとなった。

ロッシ監督が「自分は日本の映画監督の作品を見て育ってきましたし、今もそれらは自分の心の中にあります。今回、そういった場所に自分の作品を持ってくることができて非常に嬉しいです」と興奮気味に挨拶。タンガネッリも「私もとても嬉しいです。日本という国は、非常に映画に対する愛情を持っていますし、歴史も深いです。本作は、自分にとっても大きな意味を持つ作品なので、今回日本に来られて幸せです」と笑顔を見せた。

本作で「レジスタンスの精神というものを描きたかった」と語るロッシ監督。

「今も世界では大きな戦争が起こっていますし、多くの危機的状況があるわけで、そこに思いを馳せることが非常に重要だと思いました。そのために、イタリアの歴史の中で最もレジスタンスが暗闇にあった部分を物語る必要性がありました。劇中で描かれているのは、イタリアが北部と南部に分けられていた時期で、南部はすでに連合軍によって解放されていたけれど、北部は取り残されていました。そういう闇の部分での痛みや苦しみ、多くの血が流されていたことを描いています」

主人公ジオのキャラクターについては「10年ほど前にドキュメンタリーを撮った時に知り合った元パルチザンの人たち、現在は80歳とか90歳くらいになっていますが、その多くの人たちの体験談を聞いて、ジオのキャラクターを肉付けしていきました。ある意味、レジスタンスの遺産と言えます。だから、多くの物語がジオの人物像や物語に投影されています。そんな本作を、イタリアの外の国に持ってくることができて非常に光栄です」と言葉をかみしめた。

主演のタンガネッリは、「大きな挑戦だった」という雪山での過酷な撮影について「ロッシ監督と共に、レジスタンスのあの状況に完全に入り込むという方法を選びました。それは、政治的なメッセージだけではなく、もっと人間的な部分でのレジスタンスを描きたかったからです。劇中の極寒の雪山の寒さや、すごく閉鎖的な場所に閉じ込められる辛さなどは、本当に僕自身が体験したもので、その中で耐えながら撮影を続けることが必要でした。それがとてもエモーショナルな部分を呼び起こしてくれたのです」と振り返る。

また、「これは自分の祖父たちの物語でありますし、イタリアの過去の物語でもありますが、もしかすると忘れられてしまうという危険性もあります。だからこそ今、その記憶を呼び起こすことができたことは、自分としてとても嬉しいです。また、当時イタリアで起きていたこのことを、知らないであろう他国に持ってくることができて、そこも感激です」と感慨深い表情で語る。

続いて会場からは、「劇中に登場する傷んだリンゴが、禁断の果実的な要素を含んでいるのか?」という質問があがった。

ロッシ監督は「そのご指摘は非常に面白い」とした上で「元パルチザンの人たちから、戦場で非常に大きかった障害は、寒さと飢えという2つの要素だったと聞きました。もちろん、戦争なのでいろいろな困難や苦しみがありますが、今回は飢えというものをああいう形で表現できて良かったです。そこを“原罪”というものに結びつけていただいたことにも、意味があると思いました。今、現状で戦争が起きているなかで、戦争がいかに悲劇的なものかを映画が思い出させてくれます。やはり映画は、記憶というものを伝える重要なものだと思いました」と述懐。改めて国際映画祭で上映されることの意義を口にして、舞台挨拶を締めくくった。

第39回東京国際映画祭は、11月4日まで開催。
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