第39回東京国際映画祭の日本映画クラシックス部門で、日活ロマンポルノ55周年記念上映として10月28日、相米慎二監督による名作『
ラブホテル』が上映され、本作ではチーフ助監督など、長く相米作品で助監督を務めてきた榎戸耕史がトークイベントに登壇した。
『ラブホテル』は脚本・石井隆、主演・寺田農による日活ロマンポルノ後期の傑作。借金を背負い、自殺を決意した男・村木(寺田)が道連れにするためにラブホテルにホテトル嬢の名美(速水典子)を呼ぶが、彼女を乱暴に抱き、そのままホテルを去る。自殺を思いとどまった村木はその後、タクシードライバーとして働き、名美と再会を果たすが、彼女が自殺を図ろうとしていることに気づき……。相米監督、石井、寺田ら多くの関係者が既に鬼籍に入っている中で、当時を知る榎戸によるトークが実現した。
榎戸は今回の上映に際し、名美役の速水典子から預かったという手紙を代読。速水は手紙の中で、本作で相米監督、石井、寺田らと出会えたことについて「私にとって、歴然と輝く大変光栄な出来事」と述べ「(1985年の公開から)既に41年という月日が流れ、悲しいことに関係者の多くは亡くなってしまわれましたが、昭和の時代を映す巧みな一品は、この令和の時代でも、色あせることなく、みなさまの心にもしみわたることではないでしょうか。亡くなられた故・相米慎二監督、脚本の石井隆さん、寺田農さんに心より哀悼の意を捧げ、そして、上映していただける東京国際映画祭関係者のみなさま、見ていただけるみなさまに、心より深く感謝申し上げます」と思いをつづった。
石井のオリジナル脚本による本作だが、なぜ相米監督とのタッグが実現したのか? 榎戸は、本作よりも先に撮影されたが、なかなか公開されなかった相米監督の『台風クラブ』の存在に言及。「『台風クラブ』はディレクターズ・カンパニーの制作ですが、途中でお金がなくなって、赤字も出て、なかなか公開も決まらなくて「どうしたらいいんだろう?」となった時、NPC(ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)の成田尚哉さんが「相米さんと石井さんを組ませたい」と言ってくれて、石井さんも「相米さんに撮ってほしい」と考えて、脚本を書いたらしいです」と説明する。とはいえ、本作の制作予算は3000万円という低予算。「相米にとっては3000万でどうやって映画を撮っていいのか全くわからない。(榎戸が)スケジュールを書いたら「こんなの面白いのか!」って怒られました(苦笑)」と明かす。
キャスティングに関しては「当時、相米組では、寺田さんに(書き上がった)台本を持って行って、やる役を決めてもらうという約束があり、昼休みに東宝のスタジオに行って寺田さんに台本を渡したら「村木を俺がやる」と。ただ、名美役はなかなか決まらず、「日活のポルノです」と言うと、さすがに相米の作品でも、みんなに断られてしまい、最後に速水さんが見つかったんです」と振り返る。
随所で見られる雨降らしに、タクシーでの会話のシーンなど、低予算ながらも「3000万円には見えない映画になっている」(榎戸)という様々な仕掛けが施されている本作。挿入歌として山口百恵の「夜へ…」、もんた&ブラザーズの「赤いアンブレラ」が使用されている。低予算にもかかわらず、なぜこの2曲を使用することができたのか……。
榎戸は「お金がないので(山口百恵の夫で『台風クラブ』にも出演している)三浦友和さんに電話をして「CBS・ソニー(レコード会社)が文句を言ってきたら“絶対に大丈夫だと百恵さんが言っていました。私が許可しました”と言ってください」とお願いしました(笑)。だから、あれはタダです!」とまさかのエピソードを暴露。さらに「赤いアンブレラ」に関しても「相米がダビングの時に持ってきた曲で、あれもタダでした。勝手に使っちゃいました。(もんたも)OKだったみたいで、すごく喜んでいたそうです」と明かす。現在ではもちろん、当時でも“グレー”なやり方と言えるが、榎戸は「僕は相米に「やめてください」と言ったんですよ。でも、相米は「俺のせいじゃないよ、これは脚本に書いてあるんだから」って石井さんのせいにするんですよ。ひどい人ですよね、相米は(笑)」と語り、会場は爆笑に包まれていた。
第39回東京国際映画祭は、11月4日まで開催。
第39回東京国際映画祭の日本映画クラシックス部門で、日活ロマンポルノ55周年記念上映として10月28日、相米慎二監督による名作『
ラブホテル』が上映され、本作ではチーフ助監督など、長く相米作品で助監督を務めてきた榎戸耕史がトークイベントに登壇した。
『ラブホテル』は脚本・石井隆、主演・寺田農による日活ロマンポルノ後期の傑作。借金を背負い、自殺を決意した男・村木(寺田)が道連れにするためにラブホテルにホテトル嬢の名美(速水典子)を呼ぶが、彼女を乱暴に抱き、そのままホテルを去る。自殺を思いとどまった村木はその後、タクシードライバーとして働き、名美と再会を果たすが、彼女が自殺を図ろうとしていることに気づき……。相米監督、石井、寺田ら多くの関係者が既に鬼籍に入っている中で、当時を知る榎戸によるトークが実現した。
榎戸は今回の上映に際し、名美役の速水典子から預かったという手紙を代読。速水は手紙の中で、本作で相米監督、石井、寺田らと出会えたことについて「私にとって、歴然と輝く大変光栄な出来事」と述べ「(1985年の公開から)既に41年という月日が流れ、悲しいことに関係者の多くは亡くなってしまわれましたが、昭和の時代を映す巧みな一品は、この令和の時代でも、色あせることなく、みなさまの心にもしみわたることではないでしょうか。亡くなられた故・相米慎二監督、脚本の石井隆さん、寺田農さんに心より哀悼の意を捧げ、そして、上映していただける東京国際映画祭関係者のみなさま、見ていただけるみなさまに、心より深く感謝申し上げます」と思いをつづった。
石井のオリジナル脚本による本作だが、なぜ相米監督とのタッグが実現したのか? 榎戸は、本作よりも先に撮影されたが、なかなか公開されなかった相米監督の『台風クラブ』の存在に言及。「『台風クラブ』はディレクターズ・カンパニーの制作ですが、途中でお金がなくなって、赤字も出て、なかなか公開も決まらなくて「どうしたらいいんだろう?」となった時、NPC(ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)の成田尚哉さんが「相米さんと石井さんを組ませたい」と言ってくれて、石井さんも「相米さんに撮ってほしい」と考えて、脚本を書いたらしいです」と説明する。とはいえ、本作の制作予算は3000万円という低予算。「相米にとっては3000万でどうやって映画を撮っていいのか全くわからない。(榎戸が)スケジュールを書いたら「こんなの面白いのか!」って怒られました(苦笑)」と明かす。
キャスティングに関しては「当時、相米組では、寺田さんに(書き上がった)台本を持って行って、やる役を決めてもらうという約束があり、昼休みに東宝のスタジオに行って寺田さんに台本を渡したら「村木を俺がやる」と。ただ、名美役はなかなか決まらず、「日活のポルノです」と言うと、さすがに相米の作品でも、みんなに断られてしまい、最後に速水さんが見つかったんです」と振り返る。
随所で見られる雨降らしに、タクシーでの会話のシーンなど、低予算ながらも「3000万円には見えない映画になっている」(榎戸)という様々な仕掛けが施されている本作。挿入歌として山口百恵の「夜へ…」、もんた&ブラザーズの「赤いアンブレラ」が使用されている。低予算にもかかわらず、なぜこの2曲を使用することができたのか……。
榎戸は「お金がないので(山口百恵の夫で『台風クラブ』にも出演している)三浦友和さんに電話をして「CBS・ソニー(レコード会社)が文句を言ってきたら“絶対に大丈夫だと百恵さんが言っていました。私が許可しました”と言ってください」とお願いしました(笑)。だから、あれはタダです!」とまさかのエピソードを暴露。さらに「赤いアンブレラ」に関しても「相米がダビングの時に持ってきた曲で、あれもタダでした。勝手に使っちゃいました。(もんたも)OKだったみたいで、すごく喜んでいたそうです」と明かす。現在ではもちろん、当時でも“グレー”なやり方と言えるが、榎戸は「僕は相米に「やめてください」と言ったんですよ。でも、相米は「俺のせいじゃないよ、これは脚本に書いてあるんだから」って石井さんのせいにするんですよ。ひどい人ですよね、相米は(笑)」と語り、会場は爆笑に包まれていた。
第39回東京国際映画祭は、11月4日まで開催。