2026.10.28 [イベントレポート]
『木々は見ている』のクルド人監督バフマン・ゴバディ、親交のあるM・スコセッシの感想を明かす

第39回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されている『木々は見ている』の公式上映が10月28日に行われ、イラン出身のクルド人であり、本作の監督、脚本、プロデューサーを務めたバフマン・ゴバディによるQ&Aが開催された。

クルド映画の先駆者として活躍するゴバディ監督が、これまでの社会派作品とはひと味違う、ホラーテイストの作品として手掛けた本作。耳の聞こえない娘を連れて故郷のトルコの街に帰ってきた女性作家が、徐々に現実と記憶、幻想の境界を失い、奇妙な体験に巻き込まれていくさまを描く。

木と人間の不思議な関係性を描いた本作のアイデアについて、ゴバディ監督は、自身の置かれた境遇を踏まえて説明。「私はこの20年ほど、故郷を去って国外で生活していますが、それは自分の意志ではなく、政治的な事情によるものです。15年ほど、ホテル住まいをしていたのですが、ホテルの窓から外を見ると1本の木がありました。そうやって木を眺めたり、自然を目にすることで、木々や自然が私の孤独を癒し、支えてくれているように感じていました。私は、決してホラー映画をつくりたいと思っていたわけではなかったのですが、ただ、私の内面には恐怖が深く刻まれているのだと思います。長く故郷から離れ、イラン政府への恐怖を抱いており、怖くて枕元に包丁を置いていたこともありました。悪夢を見ることもあり、恐怖感と共に生きてきたので、それについて詩を書いたり、小説を書いたりしてきました。(本作は)そこから生まれてきた映像だと思います」と自身の内側にある恐怖心がこの物語の源泉となったと明かす。

一方で「以前と比べると、いまは心地よさや幸せ感じていると思います」とも。「様々な暗い部分が人生においてありましたが、そうした部分は炭になったと感じていて、その炭を自分の頭の中にあるものを描くエネルギーとして使うようになったのだと思います。汽車のように、炭を燃やして前に進むようになったんです。ですので、絶望を抱いているわけではありません。とはいえ、自分のホームグラウンドを離れて、異なる文化や言語の中で映画をつくるのは、すごく難しいことです。それでも、私は友人関係を築いていたし、撮影監督をはじめとするスタッフたちの助けもあって、映画をつくることができて幸せに感じています」と力強く語った。

ちなみに、本作にはプロデューサーとしてマーティン・スコセッシの名がクレジットされているが、スコセッシとの関係について、ゴバディ監督は「実は以前から、彼とは知り合いであり、私にとって友達のような叔父のような存在なんです」と語り「しばらくイラクに住んでいた時期には、実の叔父さんよりも頻繁に電話をくれて「元気かい?」とか「もし映画をつくるなら私にも見せろよ」と言って、サポートしてくれました。今回も「映画をつくりますよ」と伝えたのですが、脚本を見せてはおらず、ほぼ完成作に近い状態のものを見せました。そうしたら「ひとつ質問があるんだけど、なぜイスが動くんだ?」と聞かれたので「もう一度、見てください」と伝えると、もう一度見てくれて「納得しました。我々がつくる映画には、こういう発想はないので、さすがイラン映画だね」と言われました」とスコセッシとのやり取りを明かしてくれた。

映画づくりについて「私にとって、映画はポエムなのです」と語るゴバディ監督。退場間際には英語で「日本を愛しています!」と語り、映画祭と日本への親愛の情と感謝を口にしていた。

第39回東京国際映画祭は、11月4日まで開催。
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