
第39回東京国際映画祭でコンペティション部門出品作『今日が終わるまで』が10月31日、ヒューリックホール東京で公式上映され、監督・脚本のイェレナ・マクシモビッチが登壇し、Q&Aを行った。
本作は、2024年にセルビア第2の都市ノビサドの鉄道駅で起こった崩落事故をきっかけに勃発した若者たちの政府への抗議運動を題材に、考え方が違う二人の男女が出会い、逃避行を繰り広げるロードムービー。
学生たちの抗議運動を描いた作品にマクシモビッチ監督は「朗報があるんです」と切り出すと「セルビアでの学生運動はずっと以前から始まっているのですが、3日前に学生たちの要求が通り、いままでの政府の腐敗がこれから直されていきます」と報告する。
マクシモビッチ監督が本作の脚本を書き始めたのは「5年前だった」そうで、「セルビアの学生運動は、とても進歩的で民主的。暴力などは一切ありません。私自身、アナーキズムにも興味はあるのですが、彼らはしっかりと民主的に主張をして、その思いが通った」と称え「経済的には厳しかったのですが、私はこの映画をすぐに撮りたかった」と強い思いを述べていた。
Q&Aでは、スクリーンサイズへのこだわりや、レンズの使い方などについての質問が相次ぐ。マクシモビッチ監督は「すべてについてこだわっています」と笑顔を見せると「序盤は街の窮屈さ、迫害されている感じを表現したかったので、フレーム内にすべてを凝縮するような感じに、壊れたレンズを使い緊張感を出したりしています。そして徐々に郊外に行くと、二人の主人公たちに少し静けさが生まれるような画角で撮影しています。小津安二郎さんの作品にも影響を受けています」と意図を明かしていた。
またセルビア系アメリカ人から、セルビアでの映画作りについて問われると「セルビアで映画を作ることは、とても難しい。この映画も4年前に少し資金が集まりましたが、それも微々たるものでした。フィルムセンターという組織もありますが、この2年間は全く機能していない。補助はまったく出ません。この映画は共同制作にいろいろな国の名前がありますが、それはベネチア国際映画祭で上映したことで、集まったんです」と状況を説明していた。
マクシモビッチ監督は「セルビア人のなかにも、さまざまな考えを持つ人はいます。多くの考えをしっかりと反映させたいという思いはありますが『これが正しい』と白黒はっきりさせることが、この映画の目的ではありません。曖昧な部分を残しています」と断定的な映画ではなく、思考を活発にさせる作りになっていることを強調していた。
第39回東京国際映画祭は、11月4日まで開催。