■黒澤明賞受賞者決定!
黒澤明賞は、TIFFが日本が世界に誇る故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、2022年に株式会社カプコンのご協力を得て14年ぶりの復活をいたしました。昨年は李相日監督とクロエ・ジャオ監督に贈られましたが、今年は山田洋次監督、李 相日(リ・サンイル)監督、芦澤明子氏、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの4名の選考委員による選考の結果、呉 美保(お・みぽ)監督とモハマド・ラスロフ監督が受賞することとなりました。
呉 美保監督(左)モハマド・ラスロフ監督(右)
呉監督は大阪芸術大学卒業後、大林宣彦事務所を経てスクリプターとして映画制作に携わり、2006年『酒井家のしあわせ』で長編映画監督デビュー。2014年『そこのみにて光輝く』ではモントリオール世界映画祭最優秀監督賞をはじめ、国内外60もの映画賞を受賞。その後、出産・育児を経て、2024年、9年ぶりの長編映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で本格復帰しました。最新作『ふつうの子ども』では、ありのままの子どもたちの生命力を鮮やかにすくい取る演出が、国内外で高く評価されています。
選考委員による授賞理由:
呉 美保監督は2006年に『酒井家のしあわせ』で長編映画監督デビューした後、一貫して社会の片隅に生きる人々を善悪で判断せず、多面的に見つめる作品を作ってきました。特に、近作の『きみはいい子』、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』、『ふつうの子ども』では、子供たちをありのままに描く演出が高く評価されました。今後のますますの活躍を期待し、呉 美保監督に黒澤明賞を授与します。
モハマド・ラスロフ監督はイラン出身で、イラン政府による過酷な検閲や禁固判決、製作禁止処分に直面しながらも決して屈することなく、ゲリラ的撮影も駆使しながら独自の映画制作を追求してきています。2020年に第33回東京国際映画祭で上映された『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞、2024年の『聖なるイチジクの種』は第77回カンヌ国際映画祭で審査委員特別賞を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞候補にも選出されるなど、世界中のクリエイターに勇気を与え続けています。
選考委員による授賞理由:
モハマド・ラスロフ監督は、これまで体制の中で行われる人権の抑圧をテーマとする重厚な作品を作ってきました。特に近作の『悪は存在せず』、『聖なるイチジクの種』は抑圧する側の人間も一人の市民であるというヒューマニズムな観点に立ち、国際的に高い評価を受けました。様々な圧力に屈せずに創作活動を続けてきたことも含め、モハマド・ラスロフ監督に黒澤明賞を授与します。
■呉 美保監督コメント
初監督作から20年の節目に、この上ない賞を賜り、驚きとともに身に余る思いです。2010年にいただいた新藤兼人賞は、映画を作り続ける大きな支えとなりました。牛歩ではありましたが、図らずも黒澤明賞に辿り着け、なんと幸福な映画人生だろうと喜びを噛みしめています。この受賞は決して私一人のものではありません。これまで出会ったすべてのスタッフ、キャスト、映画館へ足を運んでくださった観客の皆さま、そして山田洋次監督をはじめ、私を見つけてくださった選考委員の皆さまに、深謝申し上げます。最後に、毎日とっ散らかっている私を見放さずにいてくれる息子たちと夫へ、心からのありがとうを。
■モハマド・ラスロフ監督コメント
黒澤明賞を授与いただき、大変光栄に存じます。黒澤監督の映画は、人間のあり方や、危機に直面したときに私たちが迫られる倫理的な選択についての深い考察となっています。人間、自然、そして世界に対する独自の視点を持ち、ダイナミックかつ探求心に富んだ映像の語り手であった黒澤監督の作品は、映画の世界において今なお尽きることのないインスピレーションの源であり続けています。
■呉 美保(お・みぽ)監督プロフィール
映画監督、CM ディレクター。三重県出身。
大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、スクリプターとして映画界入り。初長編脚本『酒井家のしあわせ』でサンダンス・NHK 国際映像作家賞を受賞し、2006 年、同作で長編映画監督デビュー。『オカンの嫁入り』(2010)で新藤兼人賞金賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(2014)ではモントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門最優秀監督賞を受賞し、第87 回米国アカデミー賞国際長編映画賞日本代表作品に選出された。『きみはいい子』(2015)はモスクワ国際映画祭にて最優秀アジア映画賞を受賞。二児の出産を経て、9 年ぶりの長編監督作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(2024)が上海国際映画祭コンペティション部門に選出されるなど、国内外で高い評価を獲得。続く『ふつうの子ども』(2025)はズリーン国際映画祭コンペティション部門に選出され、批評家からも高い評価を受け、世界各地の国際映画祭で上映が続いている。映画のほか、執筆活動やCM、ミュージックビデオの演出も手がけている。
■モハマド・ラスロフ監督プロフィール
映画監督。イラン南部シーラーズ出身。
社会学を学んだ後、ドキュメンタリー制作へと転じ、2000年に初の長編映画を制作。政府の検閲に真正面から向き合い続け、「権威主義的支配の下では、映画を作ることそのものが政治行為だ」という信念で創作を続けてきた。作品の多くは当局の目をかいくぐり、ゲリラ的手法を用いて秘密裏に撮影され、イラン国外での上映のために極秘に輸出された。支配と抑圧に晒された社会における個人の責任や、個人の選択が持つ道徳的側面は、ラスロフ監督作品の核心的なテーマのひとつとなっている。2010年には撮影中に逮捕・収監されたが、秘密裏に映画を作り続けた。「恐怖は最大の検閲だ。だからこそ私は恐れないことについての映画を撮る」とカンヌで受けたインタビューで語っている。2020年のベルリン映画祭金熊賞受賞作『悪は存在せず』は、ラスロフが厳しい抑圧と検閲に晒され、出国を禁止されていた最中に制作された。2022年、ラスロフは再び身柄を拘束されて収監され、8か月後に仮釈放された。2024年には8年の禁固刑判決を受け、カンヌ映画祭開幕直前に最新作『聖なるイチジクの種』を完成させるなかで、密かにイランを脱出することを余儀なくされた。女性たちの抗議運動を背景としたこの作品は、イランにおける権威主義的権力の内部崩壊を描いている。2025年、同作はドイツ代表としてアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。
なお、同賞に絡め、「黒澤明の愛した映画」と題して、下記の4作品を上映いたします。
『サーカス』(1928)、『姿三四郎 4Kデジタルリマスター版』(1943)、『生きる 4Kデジタルリマスター版』(1952)、『友だちのうちはどこ?』(1987)
■黒澤明賞受賞者決定!
黒澤明賞は、TIFFが日本が世界に誇る故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、2022年に株式会社カプコンのご協力を得て14年ぶりの復活をいたしました。昨年は李相日監督とクロエ・ジャオ監督に贈られましたが、今年は山田洋次監督、李 相日(リ・サンイル)監督、芦澤明子氏、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの4名の選考委員による選考の結果、呉 美保(お・みぽ)監督とモハマド・ラスロフ監督が受賞することとなりました。
呉 美保監督(左)モハマド・ラスロフ監督(右)
呉監督は大阪芸術大学卒業後、大林宣彦事務所を経てスクリプターとして映画制作に携わり、2006年『酒井家のしあわせ』で長編映画監督デビュー。2014年『そこのみにて光輝く』ではモントリオール世界映画祭最優秀監督賞をはじめ、国内外60もの映画賞を受賞。その後、出産・育児を経て、2024年、9年ぶりの長編映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で本格復帰しました。最新作『ふつうの子ども』では、ありのままの子どもたちの生命力を鮮やかにすくい取る演出が、国内外で高く評価されています。
選考委員による授賞理由:
呉 美保監督は2006年に『酒井家のしあわせ』で長編映画監督デビューした後、一貫して社会の片隅に生きる人々を善悪で判断せず、多面的に見つめる作品を作ってきました。特に、近作の『きみはいい子』、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』、『ふつうの子ども』では、子供たちをありのままに描く演出が高く評価されました。今後のますますの活躍を期待し、呉 美保監督に黒澤明賞を授与します。
モハマド・ラスロフ監督はイラン出身で、イラン政府による過酷な検閲や禁固判決、製作禁止処分に直面しながらも決して屈することなく、ゲリラ的撮影も駆使しながら独自の映画制作を追求してきています。2020年に第33回東京国際映画祭で上映された『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞、2024年の『聖なるイチジクの種』は第77回カンヌ国際映画祭で審査委員特別賞を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞候補にも選出されるなど、世界中のクリエイターに勇気を与え続けています。
選考委員による授賞理由:
モハマド・ラスロフ監督は、これまで体制の中で行われる人権の抑圧をテーマとする重厚な作品を作ってきました。特に近作の『悪は存在せず』、『聖なるイチジクの種』は抑圧する側の人間も一人の市民であるというヒューマニズムな観点に立ち、国際的に高い評価を受けました。様々な圧力に屈せずに創作活動を続けてきたことも含め、モハマド・ラスロフ監督に黒澤明賞を授与します。
■呉 美保監督コメント
初監督作から20年の節目に、この上ない賞を賜り、驚きとともに身に余る思いです。2010年にいただいた新藤兼人賞は、映画を作り続ける大きな支えとなりました。牛歩ではありましたが、図らずも黒澤明賞に辿り着け、なんと幸福な映画人生だろうと喜びを噛みしめています。この受賞は決して私一人のものではありません。これまで出会ったすべてのスタッフ、キャスト、映画館へ足を運んでくださった観客の皆さま、そして山田洋次監督をはじめ、私を見つけてくださった選考委員の皆さまに、深謝申し上げます。最後に、毎日とっ散らかっている私を見放さずにいてくれる息子たちと夫へ、心からのありがとうを。
■モハマド・ラスロフ監督コメント
黒澤明賞を授与いただき、大変光栄に存じます。黒澤監督の映画は、人間のあり方や、危機に直面したときに私たちが迫られる倫理的な選択についての深い考察となっています。人間、自然、そして世界に対する独自の視点を持ち、ダイナミックかつ探求心に富んだ映像の語り手であった黒澤監督の作品は、映画の世界において今なお尽きることのないインスピレーションの源であり続けています。
■呉 美保(お・みぽ)監督プロフィール
映画監督、CM ディレクター。三重県出身。
大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、スクリプターとして映画界入り。初長編脚本『酒井家のしあわせ』でサンダンス・NHK 国際映像作家賞を受賞し、2006 年、同作で長編映画監督デビュー。『オカンの嫁入り』(2010)で新藤兼人賞金賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(2014)ではモントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門最優秀監督賞を受賞し、第87 回米国アカデミー賞国際長編映画賞日本代表作品に選出された。『きみはいい子』(2015)はモスクワ国際映画祭にて最優秀アジア映画賞を受賞。二児の出産を経て、9 年ぶりの長編監督作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(2024)が上海国際映画祭コンペティション部門に選出されるなど、国内外で高い評価を獲得。続く『ふつうの子ども』(2025)はズリーン国際映画祭コンペティション部門に選出され、批評家からも高い評価を受け、世界各地の国際映画祭で上映が続いている。映画のほか、執筆活動やCM、ミュージックビデオの演出も手がけている。
■モハマド・ラスロフ監督プロフィール
映画監督。イラン南部シーラーズ出身。
社会学を学んだ後、ドキュメンタリー制作へと転じ、2000年に初の長編映画を制作。政府の検閲に真正面から向き合い続け、「権威主義的支配の下では、映画を作ることそのものが政治行為だ」という信念で創作を続けてきた。作品の多くは当局の目をかいくぐり、ゲリラ的手法を用いて秘密裏に撮影され、イラン国外での上映のために極秘に輸出された。支配と抑圧に晒された社会における個人の責任や、個人の選択が持つ道徳的側面は、ラスロフ監督作品の核心的なテーマのひとつとなっている。2010年には撮影中に逮捕・収監されたが、秘密裏に映画を作り続けた。「恐怖は最大の検閲だ。だからこそ私は恐れないことについての映画を撮る」とカンヌで受けたインタビューで語っている。2020年のベルリン映画祭金熊賞受賞作『悪は存在せず』は、ラスロフが厳しい抑圧と検閲に晒され、出国を禁止されていた最中に制作された。2022年、ラスロフは再び身柄を拘束されて収監され、8か月後に仮釈放された。2024年には8年の禁固刑判決を受け、カンヌ映画祭開幕直前に最新作『聖なるイチジクの種』を完成させるなかで、密かにイランを脱出することを余儀なくされた。女性たちの抗議運動を背景としたこの作品は、イランにおける権威主義的権力の内部崩壊を描いている。2025年、同作はドイツ代表としてアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。
なお、同賞に絡め、「黒澤明の愛した映画」と題して、下記の4作品を上映いたします。
『サーカス』(1928)、『姿三四郎 4Kデジタルリマスター版』(1943)、『生きる 4Kデジタルリマスター版』(1952)、『友だちのうちはどこ?』(1987)