2026.07.21 [更新/お知らせ]
藤津亮太さんによるアヌシー国際アニメーション映画祭2026 特別レポート!

東京国際映画祭「アニメーション」部門でプログラミング・アドバイザーを務めていただいている藤津亮太さんが、今年もアヌシー国際アニメーション映画祭に参加され、コンペ作品の傾向や、新しくオープンした会場、日本のアニメーションの躍進を写真もあわせてレポートしてくれました。ぜひお楽しみください。
 


 
 2026年のアヌシー国際アニメーション映画祭は6月21日から27日まで開催され、併催のMIFA(国際アニメーション映画マーケット)も、6月23日から26日まで行われた。閉幕時の発表によると、今年は118カ国から過去最多となる1万9100人の認定参加者が集まったという。連日最高気温が34℃に達する歴史的猛暑の中の開催となったが、映画祭・MIFAともに昨年以上の賑わいをみせていた。
 藤津は、映画・アニメーションのクリエイター育成事業「Film Frontier」(主催:文化庁、日本芸術文化振興会、ユニジャパン)や公式出品作品のクリエイターが登壇する、文化庁主催のMIFAのパネル「Finding a Shared Vision: Co-Production with Japan」(運営:ユニジャパン)に進行役として参加した。以下、26年の映画祭とMIFAなどで印象に残ったいくつかのトピックを挙げる。
 
 まず、大きなニュースとして『花緑青が明ける日に』(四宮義俊監督)のコントルシャン部門審査員賞受賞が挙げられる。今年は『花緑青が明ける日に』以外にも、長編コンペティションの本部門に『我々は宇宙人』(門脇康平監督)が、コントルシャン部門に『トリツカレ男』(高橋渉監督)、『ペリリュー―楽園のゲルニカ―』(久慈悟郎監督)が出品された。本コンペとコントルシャン部門の合計22作品のうち、5作品を日本作品が占め、その中で『花緑青が明ける日に』が受賞を果たした。同作はベルリン映画祭の本コンペティションにも選ばれており、今後も各地の映画祭で注目を集めるだろう。
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「ジャパン・ブース」でサインをする四宮義俊監督

 
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『花緑青が明ける日に』

 
 今年の本コンペティション、コントルシャン部門では「知られざる歴史」にフォーカスした作品が目立った。本コンペにエントリーされた『The Sunrise File』がイスラエルの情報機関とナチスの戦犯夫婦を描いた実話がベースの作品で、『The Violinist』はアジア・太平洋戦争で日本軍がシンガポールに進駐する展開が物語の需要な要素となる。コントルシャン部門では『58th』がフィリピンの政争で引き起こされた虐殺を扱い、『Winnipeg, Seeds of Hope』はスペインを脱出した難民たちが最終的にチリへと移住する史実を描く。アジア・太平洋戦争におけるペリリュー島の激闘を描いた『ペリリュー~』もこの流れにはまる。
 題材が単なる題材以上のものとしてちゃんと表現されていたかどうかは作品ごとに異なるが、(比較的「西欧からの視線」という意味合いが強いことも含め)題材やテーマ性に重きがおかれている、と評されるアヌシーの傾向が色濃く出たラインナップであったといえる。
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本コンペで審査員賞など3つの賞に輝いた『Iron boy』スタッフの舞台挨拶

 
 MIFAでは、日本がかかわるパネルを中心に足を運んだ。
 中でも印象的だったのは、「Global Anime Challenge(GAC)」である。GACは、Film Frontierと同じく日本芸術文化振興会の文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成事業プロジェクト支援)を受けての事業である。日本のTVアニメの第一線で活躍する監督・プロデューサー・アニメーターたちが、語学を含めた様々な研修を経て、海外スタジオでインターンを経験し、最終的にはオリジナル企画を考え、その作品のパイロットフィルムを制作するというものである。MIFAのパネルでは、参加者各自がそれぞれの企画を英語でピッチし、共同製作相手などを募った。このピッチは、この事業のひとつの節目に位置づけられる。
 日本のアニメ産業は基本的にドメスティックである。しかし今後、オリジナル企画を実現するにあたっては、国際共同製作・制作が増えていく可能性は十分ある。自らのクリエイティビティを減ずることなく、共同製作・制作に対応していくには何が必要なのか。GACのピッチを見ると、「クリエイター育成」とは、「クリエイティブと社会(国内国外を問わず)の間に橋をかける術」を鍛えることでもあるということがしっかり感じられた。
アヌシー映画祭
アヌシー映画祭

GACのピッチの様子

 
 個人作家の場合、公的資金援助を獲得する必要性も含めて、この「クリエイティブと社会の間に橋をかける術」はより具体的に求められる。「New Way, New World(NWNW)」に登壇した各個人作家のピッチは、そのあたりが丁寧にフォローされた内容だった。「GAC」のピッチを併せてみると、MIFAでのピッチは、具体的な獲得目標とは別に、クリエイターが自分の作ろうとしているものを社会の中にどう位置づけるかを、言語化する/言語化するためのトレーニングを積む、という点で大きい意味があることを改めて感じた。
 
 また上映とMIFAのプログラムの合間に、本年オープンした「国際アニメーション映画センター(Cité internationale du cinéma d’animation)」にも足を運んだ。国際アニメーション映画センターは、博物館だけでなく、シアターやレジデンスなども備え、また今後はアヌシー映画祭と施設を運営するCITIAの本部も移転してくるという。総合的な施設である。
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国際アニメーション映画センター(Cité internationale du cinéma d’animation)

 
常設展と企画展が開催されていた。企画展はフランスの制作会社アンカマを特集した「アンカマ:スケッチから神話へ 25年の創造」と、ストップモーションスタジオ・ライカの新作映画『ワイルド・ウッド』をフィーチャーした「ワイルド・ウッド:手造りの世界を初公開」のふたつである。
 感心したのは常設展示の見せ方。時系列に縛られることなく「線を動かす」「イメージに命を吹き込もう」「アートと実験が出会うとき」など、アニメーションの特徴や特性を現すさまざまなフレーズを見出しにたて、そこに貴重な資料を並べるというスタイルをとっていた。「アニメーションの歴史」ではなく「アニメーションという概念」をどう展示するかを考えた結果であろう。
日本製の“ANIME”が世界に知られる今、国内にもこのような施設は必要だろうし、そのときにはこうした本質をずばりとプレゼンテーションするキュレーションは大いに参考になるはずだ。
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常設展示の様子 ノーマン・マクラレン

 
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常設展示の様子 ヤン・シュヴァンクマイエル

 

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